[記号の由来]通貨の記号

私たちが普段なんとなく意味を理解して使っている、いろいろな記号。その、そもそもの由来を備忘録的にまとめていきます。今回の記号は「通貨記号」です。

円記号

Unicode : U+00A5

日本円でおなじみ円記号。中国の人民元も同じ記号が当てられます。これは、そもそも日本の「円」が中国由来の名称で、「円」にも「元」にも元々は同じ「圓」という文字が使われていたからです。

名前は18世紀の「銀圓」が由来

18世紀、スペインの植民地だったメキシコでは豊富な銀が産出されていました。そのため、世界中で通貨として銀が広く用いられます。アジアも例外ではなく、当時の中国(清)や日本にも銀貨が流入してきました。そして、当時中国で流通していた銀貨が「銀圓」と呼ばれるようになります。この銀圓の「圓(yen・yuán)」が名前の由来です。

後に、中国では発音が同じ「yuán」で画数の少ない「元」の字が当てられました。一方日本では簡略化した「円」の字が当てられます。

Yをもとにドルの真似をした

記号の形は「yen」「yuán」の頭文字「Y」に2本の横線を入れたものです。この横線は一般的に、ドルの縦線に倣ったのが元とされています。なお、日本の円が「en」でなく「yen」なのは、幕末~明治の英米人が「yen」と綴っていたことが始まりのようです。

円記号の構成イメージ

ドル記号

Unicode : U+0024

世界で最もポピュラーな通貨記号、ドル記号。スペインのペソ記号としても使用されます。両者が同じ記号なのは、ドル記号の成り立ちにスペインが関係するからのようです。

諸説あるドル記号の由来

ドル記号の成り立ちについては、諸説あります。

スペインの通貨ペソ(スペインドル銀貨)が起源説 その1

「円」でも解説した通り、かつてスペインは植民地であるメキシコで大量の銀を採掘していました。これにより流通したスペインドル銀貨は当然スペイン印の通貨です。
その単位ペソを表す「PS」が重なり、モノグラムとなったものが現在のドル記号、とする説です。

PSからの変形イメージ

スペインの通貨ペソ(スペインドル銀貨)が起源説 その2

上述とは若干違い、スペインドル銀貨に描かれていたスペインの国章が元という説もあります。
ヘラクレスの柱にリボンが巻きついた形が、簡略化し変形したものという考え方。

1739年銘スペインドル銀貨(メキシコ鋳造)
Wikipediaより

当時の貨幣の主役「銀」が由来説

当時大量に流通していた銀貨に因んで、「銀の単位(Unit of Silver)」のUSを元にしたモノグラムという説。

USからの変形イメージ

このほか、

  • 1ペソが8レアルだったことから、「8R」のモノグラム
  • 古代ローマの通貨セステルティウス(Sestertius)の記号HSから
  • 同じく古代ローマの通貨ソリドゥス金貨(Solidus)から

など、さまざまな説があり、確かなことはわからないようです。
ただ、ドルとペソが同じ記号ということは、スペイン絡みの説が有力に思えます。

「ドル(dollar)」の語源は「ターラー銀貨」

ドル(dollar)の名前の由来は、16世紀に流通したターラー銀貨(Thaler)が元です。dollarを発音に忠実にカタカナ表記するとダラー。ターラーと似ていますね。

「ペソ(peso)」の語源は「計量」のラテン語

一方のペソは、ラテン語で「計量」を意味する「Pendere」が語源です。現在のスペイン語でも「重さ」という意味の名詞として「peso」が使われています。

ユーロ記号

Unicode : U+20AC

ユーロ記号は、1996年12月12日に欧州委員会によって公開されました。
比較的新しい通貨記号です。

ユーロ記号の由来

新しい記号なだけあり、その由来・意味も明確です。ユーロ記号は下記のような要素で構成されている、としています。

  • ギリシア文字ε(イプシロン) → ヨーロッパ市民の重み
  • アルファベット「E」 → ヨーロッパ(Europe)
  • 2本の平行線 → ユーロの安定性を象徴
ユーロ記号の構成イメージ

さらに、欧州委員会はユーロ記号の正しい形を細かく規定しました。ユーロ記号が常に同じ形で使用されることを意図したようですが、さすがにこれは無理があったようです。現在デジタルフォントでは、ユーロ記号の形もそれぞれのフォントデザインに合わせたものになっています。

公式なユーロロゴの図形の説明
Wikipediaより

ポンド記号

Unicode : U+00A3

イギリスのポンド記号。イタリアで使われていたリラの記号でもあります。

古代ローマ帝国の、重さの単位が由来

古代ローマでは重さの単位として「リブラ(libra)」が使われていました。libraとはラテン語で秤を意味します。イタリアの「リラ(lira)」はこの「リブラ(libra)」から「b」が脱落したものです。

さらに、「◯◯リブラの重さ」という意味の「◯◯ libra pondus」から、徐々に「pondus」が「リブラ(libra)」の別名称として使われるようになります。これが「ポンド(pound)」の語源です。

Lに横線を足した形

ポンド記号(リラ記号)は、上述の起源である「リブラ(libra)」の「L」に、ドルや円のように横線を足したものです。

ポンド記号の構成イメージ

通貨記号の起源を探ると、だいたい銀貨がそのきっかけを作っているように思えます。
しかし、最もポピュラーなドル記号の由来が一番あやふやだったのは意外です。
以上、代表的な通貨記号の由来でした。